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2021年5月07日

「ケンチク」モノローグ Vol.3

接頭辞「meta」について

私たちの会社名METAVORTEXはmeta+vortex(渦)の造語です。metaはもともと古代ギリシャ語の単語で「〜のあとに」という意味があります。それが転じてmetadataやmetalanguageなど「超越した」や「高次の」という意味や、metamorphoseのように「変化」を意味する言葉の接頭辞として使われています。余談ですが、映画「マトリックス」で主人公ネオがトーマス・アンダーソンだったころ勤めていた会社名「MetaCortex」(メタ皮質)も高次の意味で使われています。

そして、興味深いもう一つの別の意味として、metaはプラトンの著作「饗宴」の中でmetaxy(metaxis)=中間という意味や、極と極の間の動きとして定義されています。例えばmetamodernismではmodernismとpostmodernismの間を仲介するものという意味で使われています。2つの極を振れる動きのイメージは「運動」や「第3空間」などを想起させ、私たちの社名に込めた意味により近づきます。すなわち、渦のなかに運動、空間、曲線などの建築的要素を見出すこと=「建築」の発見です。それは雲を見て、いろいろなかたちを見出すことと同じです。

また、多くの建築家に影響を与えた生物学者ダーシー・トムソンは、著書「生物のかたち」で動物の様々なかたちはその比率を変えることで関連付けられることを指摘しました。前回書いた「カルテジアン・グリッド」の比率を変化させることで2つの要素をつなぎ多様性を生むという意味ではこれもmetaxy的です。 このように「meta」が持つ様々な意味を考えることで多様な建築をつくる助けにしたいと思っています。

ダーシー・トムソン「生物のかたち」 の図案をもとに作成

最後に、接頭辞metaを調べてmetamodernismにたどり着いたので、metamodernismについて補足します。Metamodernism=メタモダニズムは日本ではあまりなじみのない言葉ですが、1975年ごろのアメリカ文学で登場しました。オランダの理論家Timotheus Vermeulen と Robin van den Akkerが2010年のエッセイでメタモダニズムを詳しく説明しています。そこではメタモダニズムはモダニズムとポストモダニズムといった2項対立ではなく、その間を揺れ動く振り子のように定義しています。過去20年間の危機(気象変動、金融危機、世界的な紛争の激化等)をきっかけに、皮肉的なポストモダンの定義ではなく、皮肉と誠実さの軸間を揺れ動きながら超越的な視点を持つ新しい定義です。建築だけでなく社会問題を含んだ思想として定義されている言葉でとても共感が持てます。

続きはまた改めて書きます・・・


2021年1月28日

「ケンチク」モノローグ Vol.2

建築と場「コーラ」

今回は建築の設計プロセスについて考えます。
設計とは設計主体、いわゆる自分が自由に設計する意識がありますが、何でも有りな自由な設計というのは拠り所がなく意外と不自由と感じることがあります。

近代にヨーロッパで形成された空間の考え方の中で、古代ギリシャの哲学者プラトンは創造者「デミウルゴス」が物質世界を想像したと言っています。それによると、デミウルゴスは、普遍的なものイデアをモデルとし、そのコピーとしての似像を生成しますが、それが形作られるための「場」が「コーラ」と呼ばれています。

コーラはコーラでもドリンクの「コーラ」ではありませんよ

イデアは設計図のようなもので、設計図をもとに似像の物質世界が作られるわけですが、興味深いことに、設計図がそのままつくられるわけではなく、コーラという場で作用して生成されるわけです。「コーラ」とは捉えがたい概念で、子を生成する母や子宮などとして例えられています。それは存在=父、生成=子で、第3の場としての母、子宮という意味です。外界から守られつつ育まれる場、この空間がないと子が生まれない、そんな場所です。

「コーラ」という場は私にとって想像力をかきたてる存在です。子宮はラテン語でマトリックスと言いますが、マトリックスは数学では行列を意味します。「コーラ」=子宮は設計図をそのまま再現して生成する単なる部屋ではなく、行列計算のように生成を変換する何かがないと働かない場に思えます。これを設計のプロセスに拡大解釈すると、設計図以外に生成するためのドライビングフォースとそれを育む守られた場が不可欠と感じます。私の場合はそれが新しい秩序=「数学的手法」なのではないかと感じています。例えば先ほどのマトリックス=行列でも、行と列の配列を掛け合わせるだけで複雑な結果が生まれます。同じように数学的手法をパターン化すると、そのパターンが自律的に働き出す感覚があります。これで育んだのちリアルな生成物として建築化していくのが建築の創造過程なのではと思っています。

近代建築はカルテジアン・グリッド(デカルト座標系)によって規定されています。このグリッドの呪縛からなかなか抜け出すことができません。それはカルテジアン・グリッドの子宮のような空間で創造されるからです。「コーラ」の場にカルテジアン・グリッドではない座標系の導入が多様な建築の創造を促すと考えます。その新しい座標系への変形を促すものが数学的手法であるとも言えます。

続きはまた改めて書きます・・・


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